2017年1月27日
【羊の出産シーズン】命が誕生する現場にいるということ
遠農の羊が出産シーズンを迎えています
今年も遠農にいるサフォーク種の羊たちが出産シーズンを迎えています。最初の出産を迎えたのが1月14日で、それから昨日までで5頭の新しい命が誕生しました。
出産のタイミングはバラバラ。この期間は担当の先生が数人で交代しながら羊たちの様子を見守っています。自然分娩が一番安心ではあるものの、中には難産で介助が必要な場合があったり、何か問題が起きた時に発見の遅れが子羊の命取りとなるケースもあるためです。
命の現場に立つ者として
遠別農業高校を卒業し、実習助手として働く中島先生はこれまでに100頭以上の羊の出産に立ち会ってきました。なかには出産後、死んでしまった羊を見ることもあったそうです。『こうやって生まれてきた羊を家畜として育ててまた、出産の機会に立ち会う。その度にまた、命について考えさせられる。それは学生時代から変わらない。』
そうやって、出産を控えた羊を見ながら呟く姿が印象に残りました。
次第に陣痛のペースが速くなり、苦しそうに無く羊。
苦しげな鳴き声を聞いて心配そうに見つめる他の羊も。
頭が出てきました。本来であれば足から出てくるそうで、この場合は肩が引っかかってしまい介助が必要になることに。急いで職員室に連絡し、先生総出で羊の出産に立ち会います。
引っかかっている部分に直接、手を入れて引っ張り出します。『頑張れ、頑張れ!』と励ましの声をかけながら、羊がいきむタイミングに合わせて何度も引っ張る。
その場にいるすべての人が固唾を飲みながら見つめ、羊舎の中には苦しげな羊の鳴き声、心配そうな鳴き声、励ましの声が響きます。
あまりの苦しさに顔を上げる母羊。痛みに耐えかね、腰を抜かしてしまう状態に。必死に立ち上がらせて、励まし続ける先生たち。
そして、ついに子羊の足が出てきて、無事出産をすることができました。頭が見え始めてから約30分前後での出産。見守る人たちから安堵のため息が大きく漏れた瞬間でした。
生まれた子羊を慈しむように舐めて粘液を取る母羊。
命の現場にある奇跡と過酷さ
難産になってしまったことで、子羊、母羊の容態に少し心配が残るとのことで、しばらく様子を見ていると母羊の容態が思わしくありません。本来は立ち上がり、子羊に初乳を与えなければならないのですが立ち上がれない母羊。
立ち上がれない母羊の代わりに初乳を絞り、子羊に与えます。
元気よく飲み込む子羊。
痛みに堪え立ち上がれない状態で、苦しげな鳴き声をあげながらも子羊を必死に守ろうとする母羊の姿には考えさせられるものがありました。
小さな高校で生まれた、小さな命。ですが、その出産の現場で見る命には何物にも変えられない尊さと強さがありました。
出産の様子は動画にも収めていますので、ご覧ください。
<写真・動画/文 NPO法人えんおこ 原田>